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作品紹介

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上林 暁と黒潮の文学・文化

上林 暁 文学散歩道
〜梢に咲いてゐる花よりも地に散ってゐる花を美しいと思ふ〜

紀貫之の『土佐日記』で紹介された高知県は、多くの文学者を生んできました。そんな県を代表する作家の一人が、黒潮町で生まれた”最後の私小説家”「上林暁」です。日本独特の小説概念である私小説。中でも上林暁は、まさに日本の作家らしい精神性を作品の中で素直に表しています。上林文学のファンである又吉直樹氏が、第153回芥川賞受賞後の2015年秋にこの地で講演会を行ったことで、上林作品への注目が再燃しています。

 

町内の入野松原には、團紀彦氏により設計された図書館「大方あかつき館」が「上林暁文学館」を併設しており、緑に映える真白な姿が美しい。その傍には、川端康成氏の染筆による「上林暁生誕の地」の記念碑と上述の歌を刻む文学碑ある。上林の生家も町内に残っており、ここを起点に上林の作品に登場する風景を訪ねてはいかがだろうか。

上林 暁
〜本名・徳廣 巌城〜

1902年、現在の黒潮町下田ノ口に生まれる。県立第三中学校(現・中村高校)の頃より作家を志し、生涯
その志を変えることがなかった。貧困と戦争、妻の発病とその死。そして二度にわたる大病と半身不随による18年に及ぶ病床での生活など、度重なる不運に見舞われた。しかし不屈の作家魂と努力、忍耐、家族の献身に支えられ、喘ぎながら岩に刻み込むように私小説をしたためた。

代表作には、妻の闘病生活を描いた「聖ヨハネ病院にて」。妻の介護の中での不安な心情を描いた「野」。黒潮町の浮鞭地区にあるカリト坂を舞台にした「春の坂」などがある。また病床で書いた「白い屋形船」は読売文学賞を、「ブロンズの首」では第1回川端康成賞を受賞している。

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